男は.秋の朝のまだ陽のあがらぬうちに、田んぼみちをいそぐ。
役番で農事実行組合長の職をもたされて、農業委員選挙にまきこまれた。
男は、部落から候補を推選してしまツたが、本人が承諾しないので、長老に説得をたのみに行くのだ。
七十をこした長老は漢文口調で「自分の仕事に専念するもよし、しかしまた、要望にこたへるのも男の本懐でないかナ。家業ひとすじが、人生ではあるまい」と、あツさりと自信のほどをみせて、引受けてくれる。
長老の一言で、おもひどほりに立起をきめるだろうと、待ってゐると、承諾するとの、しらせがきた。
男は、つぎの作戦として、協力部落にをる現職のところへ、侯補といツしヨに、腹を割ッた話をしに、おうかがひした。
「わかり申した。
なん期も委員をかさねてゐると、馴れあひになったり、八百長になつたり、ダメなものですワ。
正当な意見でも、いつのまにやらボヤかされますネ。
新人が入るべきですヤ。
ようがす。
私は立たないで、できるかぎりの、お力になりス」
との確約をうけて激励される。
男は、勇み足になって作戦を縦横にとばした。
そんなあひだにも男には九心型の追究がすすんでゐる。
それは人の顔色にもうかがへることだツた。
家宝の老女が死したとき、肉体とゆふ雑をすてて、ワ行の 整理心の声をさけんで往生した死の相は灰色。
氷のようにすきとほった蒼白さ、とでも言へはしなかったろうか。
フト、人が恐しさからにげるときは、蒼白になる、と、ピンときた。
嫌なものからのがれる色だ。
百分だけの殼のなかへ引っこんでしまふ色だナ。
前進する力がもぎとられるのだ。
そしたら心体はどこへ行くのカ。
の元基へもどるほかない。
己へ戻る。
縮む、己だけにまとまる。
この顔色は、ワ行 整理心のさけびの色だ。
そうだ、にげる色。蒼ざめる色。
灰白色。
この色は、ワ行 整理心型が共鳴する色ではないカ。
「あツ」男のものおもひは、検照燈にてらし出されたような、心型と色の関係をつかみにかかった。
冬の空がうかんでくる。
灰色の雲がうかんでくる。
ブルブルふるへる血の気の引いた蒼ざめた顔がうかんでくる。
男は、まづ、こうむすびつけた。
ワ行 整理心型―灰白色と共鳴。
外をみると、田んぼが黄色にみのって波うツてゐる。
まてヨ、梅の実も、緑から黄へとうつツてくるころから、貯へがまとまってくるのではないかナ。
バナナもパイナップルも、黄色くしてたべるとおいしいし、ミカソもナシも、黄色づくと、あま味がでてくる、としたら、黄は貯入の色、うけいれる色、力行迎入心型の色、ともみえてくる。
男は、 心型を、貯入心ともみてきてゐた。
よろしい。こうあててをこう。
力行 迎入心型−黄色に共鳴。
梅の実も、黄色づくまへは緑だ。
野原が緑色のころは、栄養のだしいれさかん、新陳代謝のはげしい、分化のはげしい時季ではないかナ。
緑の旗をふる時代は若者ではないかナ。
まだ未熟時代、あれはなんだこれはなんだ、疑問の時代、批判分析はげしい年代。
ナ行の 分析心型は。緑と共鳴するとみえる。
よろしい。こうあててみる。
ナ行 分析心型−緑色に共鳴。
さて.堂々二コニコの. 心型(基本.完全、共存)の共鳴する色はなんだろうナ。
陽気な顔色だ。
健康の色だ。
病ひから回復へむかふ色、そうだ、手相の本に.健康.快活な人の血色は、桜色とある。
男は、まづ.サ行 原体心型−桜色に共鳴、とした。
あとで、これを赤外線.色としては.純白とする。
青雲の志、とゆふコトバがうかぶ。
人生いたるところに青山ありだ。
あを、は希望の色かな。
空のあを。
海のあを。
希望に胸がはずんでゐる時代が青年なのかナ。
空色や海の色に、希望がひろがるのだろうか。
希望をひろげる,八方へと心をひろげて行くのは,ハ行拡大心型であったが、そういへば、英語の青にハ行とみるEがある。
「BLUE(B )ひろがりが(L )左右につらなる」とでてくる。
やはり英語も、青を、希望の色とみえたのかナ。
こうしよう。
ハ行 拡大心型 青色に共鳴。
怒ったときの顔には赤味がのぼってくる。
ふんぱる、こらへる。
こんなときにも赤くなろう。
これは、力をおさへこむときの色だ。
抵抗する心のときだろう。
自分を守る心のときの色、 守備心型がはたらくときには、赤が共鳴してくる。
守りをすててにげると、この赤の守備心が引いていってしまツて、蒼白になるのかな。
赤旗とゆふのがあるが、これも 守備心の色とすれば外へ低抗する心をあらはすことになる。
女や子供や若者が,赤色をすきだとしたら、 守りの色と見える。
赤がつくと車をとめるが、 守備心型は、(動きをこらへる、力を内におさへる感情)としてきたから、赤がでてくると、こツちも、力をこらへる心になろう。
危険物を送るのに、赤印をつける。
これも, 心型の(なかを守る)心のあらはれとみえてくる。
これでよかろう。
マ行 守備心型−赤色に共鳴
そうすると、 守備心型の相性になる進取心型は、どんな色と共鳴しようかナ。
どうも、壮年時代は、橙系統をこのむとする比率がおほくはないヵ。
木の芽、枝の先の心型のあらはれのと
ころにも、橙系の色がおほく見えはしないかナ。
橙系統は、前進時代の色ではあるまいか。
こうしてみよう。
夕行進取心型−橙色に共鳴。
それでは、ヤ行の 集抱心型が共鳴する色、となったとき、この、 心型は(かかへる,集める、情熱の心)としてあったから、瞼だ、唇だ、陰唇だ。
この抱へこむはたらきのところは、紫色をだしてくるとおもへてくる。
だきかかへる心型のこころは、情欲につながるだろうナ。
性愛に熱中するほど,瞼のふちとか陰唇とかが、紫をおびるとよんだ気がする。
「恋の瞳が紫のほのほに燃えてゐた。」のような小説の文句をみつけたときは、しめた、とおもった。
だから、こうきめてをこう。
ヤ行 集抱心型−紫色に共鳴。
このほかに.どんな色があるかナ。
黒、黒字だ、となれば.スムースに仕事がつながった。
連絡がついた、とならうか。
赤字だ.と、いったら、 守備心型の心で(動きがとまった.おさへられた)となるのだろう。
黒い色は.冠婚葬祭.どっちへつけて行っても失礼とならないといはれよう。
黒い色は.社交の色となるだろう。
だから、ためらふことはあるまいナ。
こうしよう。
ラ行 連絡心型−黒色に共鳴。
そんなとき、だしへに来たような新聞の記事が目につく。
「私たちに、花の色がみえるのは、花びらに当った日光がはねかへってきて、私たちの目にうつるからです。
太陽の光線をプリズムにあて分散させると、虹のような七色に分れるとほり、日光にはたくさんの色がふくまれてゐます。赤い色は、日光のもつ色のうちで、赤い色の部分をおほく反射するために赤く見え、黄色の花は。日光の黄色の部分を多く反射するために黄色く見えるのです。
また白い花は、日光の色の全部を乱反射するために白く見え、黒いものは、日光の色が全部吸収されるために黒く見えます。
ところが。植物に、真っ黒い色はありません。
黒ユリや、黒いチューリップなどのように、黒っぽい花はありますが、これは両方とも濃い紫色です。
黒豆の皮も水で煮ると紫色がでてきます」 |