太陽魔術 | ||||
これも、太陽の光線を、アカサタナハマヤラワの感情とつないだものにすぎないヨ。 アカサタナハマヤラワの感情は、太陽の光線の気力につながッてゐるときこえたネ。 たッた一つの太陽が地界の生物を支配してゐるのサ。 だから、太陽の光線の声をならべれぱ、人生の基本形がそろふはずだナ。 私の死んだあとに 非凡の人あらはれてネ 太陽の光線を 一、(灰白)紫外線のワ行心だけにしてしまッたときは 世界は 殺人国と化するヨ 人みな、欠点をあばき、ののしり つばをかけ 足で蹴りあげ 押したほし 夫はコップを床にたたきつけ 妻は外へおんだされ 子供とゆふ子供は道にさまよッてのめしあひ 老人は子にすてられ、子をすてて、家出をするサ 世界中の人びと みな、ひとりぼツちとなり 人みな職業を嫌になり逃げるヨ たがひにおそひかかり バクダソはとび 刃は、血潮をもとめ 自分を殺すもの、あとをたたず 世界は死の国の直前となり 生れた赤ん坊は、たちまち外へなげられて死ぬヨ 私の死んだあとに 非凡の人あらはれてネ けョふは太陽の二、黒色光線のラ行の心だけを地上に放射させれば 世界の人びとは手をつなぎ 仲よくなり 世界中は 結婚、交歓、和解、デート、野合で 料理屋はテンテコ舞ひをするだろうネ 人と人、男と女 ことごとく結合して、もはや恥づかしい格好ではないナ 生れる赤ん坊も、三つ子、五つ子、八つ子 ばかりで 医者も看護婦もこないのだが 一人として死ぬものはゐないサ あすは.また 三、碧色光線のハ行の心だけを地上に放射させれば 世界の人びと 希望をかたり、 空想をほしいままにしてネ 虚飾にあけくれ とらぬ狸のソロバンをはじき 美食に腹づつみをうち すべての男女は愛情に胸ふくらみ 人体の性現象もふくれて おほいに全身興奮気分も湧こうが 一向に実行力がつかないネ そして、ある日は 四、緑色光線のナ行の心だけを地上に放射させれば 世界の人びと 議論 口論 批判の おしゃべりが立板に水よりもはげしくなり 学者の分析研究は 冷厳となツて物質と一体化し 他人をかへりみないゾ 生れた赤ん坊も、たちまち目をあげて、四方をいぶかるサ 私の死んだあとに その非凡の人は ある日の太陽から、五、黄色光線の力行の心だけを地上に放射させれば すべての人も動物も 一日中、口をあけて はいれるだけの食べものをのみこみ 売りにきた、衣服、自動車、航空機、家具、 船蔵宝石、のたぐひを みな買ひこんで置く場所は山とふさがり 世界国の人びと 金、銀、ダイヤ、高級化粧品を、からだいちめんはりつけて 人みな、大の字に寝てゐようネ ところが 太陽から、六、橙色光線の夕行の心だけを放射させた日には 世界国の人みな進みだし 走りだしてネ 相手にとびつき 口の先.手の先、足の先、性先端、のすべてを.とがらせて行為にすすみ 列車も自動車も航空機も 停まることなくかけまはるヨ 世界中の、陸、海、穹の三軍も進撃を開始 生れた赤ん坊もすぐ歩きだし ひとりとして動かないものはゐないのサ 私の死んだあとに 非凡の人あらはれてネ 太陽から、七、赤色光線のマ行の心だけを地上に放射させた日には その瞬間 世界の人ぴとは、家の中にこもってしまひ 外にでないヨ ピストル、大砲、バクダソ、核装備.のたぐひを みな.建物の中に準備し 顎をひき 肩をいからせ 足をふまへて外敵にそなへ 人類みな、居所にとどまツて動きをこらへるネ 赤い旗をもツて.世界の都市は囲まれ 人ぴとの目だけランランと燃えて怒り そして一人もうごかずに 「この内に力があるゾ」 と、力んでゐようナ 次の日 その非凡の人が 太陽から、八、(純白)赤外光線のサ行の心だけをふりそそげば この世界国の教会の鐘 神社.仏閣の 鐘が鳴り 人みな.神をたたへ 仏をほめ 家族中の目はかがやき みな笑ひ 円満具足 赤ん坊も笑ひながら生れてくるヨ 人びとは恐れるなにもなく、堂々と闊歩し 人に害する悪人は、ひとりもゐないサ たがひに、ほめあひ ひとりひとりが天上天下唯我独尊 警察、軍人、弁護士、検事、宗教家、みな 職をうしなツて 神や仏のように、笑ひあふナ 私の死んだあとに 非凡の人あらはれてネ 太陽から、九.紫色光線のヤ行の心だけを放射させた日には 地上の人類 たがひに抱きあツて、唇をすひ 足をからみ 眼は、紫の災のように燃えるヨ 演奏は、最高の情熱に陶酔し 画家はみな、ゴッホのような狂ほしさをゑがくヨ 作家、学者、政治家、は 仕事に熱中して妻の声も耳にはいらぬゾ 踊り狂ふ男女の絶叫は 魂と肉とをとかして、しがみつき 生れ落ちた赤ん坊は たちまち.家族中の情愛の胸にだきしめられるナ いま.太陽は この九つの光線の、綾織りを、回転させてゐるヨ 私が死んだあとに 地上の人類が これを見抜いた時にこそ ようやく平和をかんがへようサ この太陽系の魔術をしツたとき それを、悟ッた日の、きたときにかぎり 私の死んだあとにだけ 平和がうまれる うまれるだろうネ そのころには いま地上にゐる人は 一人も 住んではゐないヨ いま この九つの光線の心を一つにして 太陽がかがやいてゐるヨ この魔術に 人類は挑戦しなければならないのダ そこに 平和原理があるサ |